借地権の価値について考えてみましょう。

借地(権)にも価値があるということをご存じでしょうか?


〈とある夫婦の会話…〉
 平成23年××月○○日
  東京都品川区、自慢の新築住宅でくつろぐ平凡な夫婦の日常会話…。

  夫「お袋が亡くなって、もう1年か。親父もすっかり憔悴しちゃって。もう長く
ないかもしれないなぁ」

  妻「そういえば、三丁目の吉田さんだけど、相続税の支払いが大変だって言ってい
たわ。ところで、うちは相続税支払えるかしら。あなた一人っ子だし」

  夫「相続税?考えてもみなかったなぁ〜」

  妻「お義父さん、恵比寿の大きな家に住んでいるわよね。あれ、かなりの価値があ
       るんじゃないかしら?」

  夫「確かに土地は広いけど借りているだけだし、建物は築30年以上も経っている
からほとんど価値がないと思うよ。それに、現預金だって多くても退職金の3
千万円くらいじゃないかなぁ」

  妻「そう。それならいいのだけれど…。吉田さんの話を聞いて少し心配になったみ
    たい」

  夫「心配しすぎだよ」

  妻「そうね。相続税なんて、もっとお金持ちの人が支払うものよね」

  
  3年後…。相続発生。夫婦の予想に反して、相続税を納めることになってしまいました。なぜでしょうか?実は借りているだけだと思っていた借地に権利(借地権)があり、その借地権にも価値があったのです。
   

〈借地権の価値〉

借地権の価値とはいったい何でしょうか?ここでは、なぜ借地権に価値があるのかを見ていきます。

借地権は「借地借家法」という法律によって強力に保護されています。

借地人はこの「借地借家法」の保護のもと、その支払っている地代以上に大きな利益を受けているのです。

この支払っている地代以上の利益を貨幣額で表示したものが借地の価値(借地権価格)なのです。それでは、借地人にとってどのような利益があるのでしょうか?

1.半永久的に使用することができる
「借地借家法」の保護によって、借地上に建物が存在する限り、借地人は契約を更新し続けることができます(土地所有者に正当事由がある場合を除く)。

つまり、借地人が望む限り、その土地を半永久的に使用することができるのです。

半永久的ということは、地代さえ支払っていれば、(契約の範囲内ですが)その土地を所有しているのと同等の利益を受けることができると考えることもできます。
 
2.地代が低く抑えられている
 「借地借家法」の保護によって、地代の値上げが抑制されているため、昔から借りている土地の地代は、その土地の適正な地代と比べてかなり低く抑えられており、いわゆる「借り得」といわれる部分が発生しています。

つまり、仮にその土地を新たに借りようとする場合、実際に支払っている地代よりも高い地代を支払わなければ借り受けることができないと言うことです。

逆に、実際に支払っている地代で借り受けることができるであろう土地よりも、グレードの高い土地を借り受けることができているとも言えます。

上記のような利益が経済的価値として把握され、借地権価格を構成しているのです。

ただし、借地権があるといっても、必ず借地権価格があると言うわけではありません。

大都市やその近郊のように、土地が不足している地域では、対価を支払ってでも土地を借りたいという需要があります。

しかし、土地が余っているような郊外では、対価を支払ってでも土地を借りたいと言う需要がありません。

このような場合は借地権という権利は存在するものの、借地権価格は存在しないということになります。


〈相続における借地権の評価額〉
借地権に価値があるということについては上記の通りです。ここでは、借地権が相続においてどのように評価されるのかを見ていきます。

相続における借地権の評価額は次の通りになります。

借地権の評価額=自用地価額*借地権割合

自用地価額とは、土地の更地価額です。つまり、相続における借地権の評価額は土地の更地価額に借地権割合を乗じて求めます。

借地権割合とは、路線価図に記載されている割合のことです。

ちなみに、路線価図は国税庁のホームページにアクセスすれば、どなたでも簡単に閲覧することができます。

下記の図は、路線価図を一部抜粋したものです。
  借地権路線価図.png
 
赤枠で囲まれた部分が借地権割合表です。

青枠で囲まれた部分が評価対象地(吉田さんの土地)だとします。

この土地の接している道路(路線)に「620 C」と付されています。「620」とはこの路線に接する土地のu当たりの単価です。

また、「C」とはこの路線に接する土地の借地権割合です。借地権割合表に照らし合わせてみると、この路線に接する土地の借地権割合は70%であることが分かります。

70%ということは、土地所有者の権利(所有権)の評価額30%(100%-70%)よりも、借地人の権利(借地権)の評価額70%の方が大きいということです。

「借地権の評価額の方が所有権の評価額より大きいの?」と疑問に思うかも知れません。

しかし、よく考えてみてください。

借地人は(契約の範囲内ですが)半永久的に土地を使用することができるのです(土地を所有しているのも同然)。

逆に言えば、土地所有者は半永久的に土地を使用することを諦めなければなりません。

土地所有者は土地を持っていても、わずかな地代を受け取る利益しかないのです。

このように考えれば、どちらの利益の方が大きいのか、お分かりになっていただけると思います(ただし、土地が余っているような地域では、わざわざ土地を借りたいと思う人も少ないので、その分、借地権割合も小さくなります)。

さて、それでは吉田さんの借地権の評価額はいくらだったのでしょうか?

吉田さんの借地の面積は200uです。上記の算式にあてはめますと、借地権価額は下記の通りになります。
 
借地権の評価額 (620千円*200u)*70%=86,800千円 になります。

ただ借りているだけ、と思っていた借地(権)に実は86,800千円もの価値があったのです。これでは、相続税を支払いうことになっても不思議ではありませんね。

〈まとめ〉
一般の人にとって借地権に価値があると言われても、ピンと来ないかも知れません。

私は地主さんの税務顧問をしていますが、実際、借地人の方で借地に対する知識がないがために、損をしてしまっているケースをいくつか見てきました。

よくあるケースとしては、親の借地権を相続するケースです。

相続人の方には既にマイホームがり、借地を有効利用する方法も知らないため、タダで地主さんに返してしまうのです。

ちょっと、待ってください!!借地権には価値があるのです。相応の値段で地主さんに買い取ってもらうように交渉することができます。

また、買い取ってもらえない場合でも、地主の承諾又はこれに代わる裁判所の許可を得て、借地権を第三者に売却することもできます。

実際に借地権売買の仲介を生業としている業者もありますので、ご興味のある方は、インターネット等を活用して調べてみてください。

これまで、借地(権)にも価値があると言うことと、大雑把ですが相続における借地権の評価額についてご説明させていただきました。

なお、実際の土地の評価額(上記、算式中の自用地価額)を求めるのはもっと複雑で、一般の方には理解しがたいものです。

そこで、この記事を読んで、「うちは大丈夫かなぁ?」と思われた方は、一度、専門家である税理士に相談していただくことをお勧めします。