気になる税法の改正

■相続税編

 

平成23年6月の改正で棚上げされていた相続税法の改正が行われることになりました。

たんす預金、名義預金や死亡保険金も相続財産になることをご存知でしょうか?

 マイホームがあって死亡保険に加入している方などについては、相続税がかなり身近に感じられるようになりますので、「自分の場合は相続税がかかるのか否か」くらいは知っておけば、万が一の時でも安心です。

 

※平成23年11月上旬において審議中ですが、この改正の重要性を鑑み、成立したものとして記述・作図しております。

なお、成立した場合の適用開始時期は平成24年1月1日で調整されています。

 

T ≪ サラリーマンにも相続税が課税されます! ≫

 サラリーマンというのは比喩的な表現ですが、相続税は資産家だけの問題ではなくなりました。

今回の改正では『遺産に係る基礎控除』(簡単に言えば、遺産総額がこの金額までなら相続税がかからないという金額です。下表参照)が引き下げられることになり、いままで相続税と無関係であった方に対しても「申告」が必要な場合や「相続税納税」も発生する場合が多くなるでしょう。

 

 

図表 遺産に係る基礎控除.bmp

※   法定相続人→相続の放棄があっても、その放棄がなかったものとした場合における相続人となる者

 

たとえば、【4人家族(父母と子2人)・マイホームあり・貯蓄あり・死亡保険あり】といった世帯についても他人事ではなくなるのです。

大黒柱の父親が亡くなり、その時の財産が次の前提で考えてみましょう。

マイホーム(土地・建物) 4000万円

現金・預金        1000万円

死亡保険金        3000万円

   課税価格         8000万円

※    簡単にするため特例や非課税を適用済みの金額とし、法定相続分で分割するものとします。

 

◆    遺産に係る基礎控除の求め方

 

  改正前  5000万円 + 1000万円 × 3人(妻・子2人) = 8000万円

  改正後  3000万円 +  600万円 × 3人(妻・子2人) = 4800万円

 

◆    課税対象の遺産総額と相続税額

 

改正前  総額8000万円 − 基礎控除8000万円 = 0

∴ 相続税はかかりません。

改正後  総額8000万円 − 基礎控除4800万円 = 3200万円

∴ 相続税額 175万円

図表  相続税額の試算


相続人が配偶者と子供2人の場合

相続税の課税価格 改正前   改正後  
  法定相続分 配偶者が
1億6000万円まで取得
法定相続分 配偶者が
1億6000万円まで取得
3,000万円 0 0 0 0
5,000万円 0 0 100,000 0
8,000万円 0 0 1,750,000 0
1億円 1,000,000 0 3,150,000 0
1億5,000万円 4,625,000 0 7,475,000 0
2億円 9,500,000 3,800,000 13,500,000 5,400,000
2億5,000万円 15,750,000 11,340,000 19,850,000 14,292,000
3億円 23,000,000 21,466,600 28,600,000 26,693,300
5億円 58,500,000 65,550,000
10億円 166,500,000 178,100,000

 

図表 相続税額の試算_相続人が子ども2人の場合.bmp

 

配偶者がいる場合、配偶者の税額軽減を使うと1億6000万円または法定相続分まで税金がかかりませんので、これを利用して、その場しのぎに財産を配偶者に相続させてしまうと、その配偶者の相続の時に税負担が大きくなりますので、計画的に行うことが財産を守るためによりいっそう必要になってきます。

 

もし、相続税について少しでも不安を抱かれた方は、まずは財産の棚卸をしてみることをお勧めします。各々の親族や財産の状況によって、課税される遺産総額や相続税額を減額させる方法がありますので、このページをご覧になって「自分の場合の相続税はどうなのか?」と心配に思われた方は早めに専門家にご相談なさってみたらいかがでしょうか。

 

U  ≪ 遺産を2億円超取得する方がいる場合は増税になります! ≫

 遺産に係る基礎控除の改正によって相続税が課税される方が増加することをみてきましたが、高額な財産をお持ちの方はさらに相続税の税率が見直された点にも注意が必要になります。具体的には次の図のとおりです。

 

図表 税率改正

図表 税率改正.bmp

相続税は所得税と同じく超過累進課税を取っています(相続財産が増えるにしたがって税率が高くなります)。この改正においては、遺産総額のうち2億円超3億円以下の部分の税率が『40% ⇒ 45%』に増額されるとともに、3億円超いくら取得してもその部分の税率は50%でしたが6億円以下までとなり、新たに『6億円超部分の税率55%』が設けられました。

 

配偶者の有無や遺産分割の仕方にもよりますが、おおむね課税価格5000万円以上の方は相続税を試算するなど意識しておくとよいでしょう。

 

 

V  ≪ 死亡保険金が非課税でなくなるかもしれません! ≫

 

 最初に、生命保険会社から給付される死亡保険金は、死亡時に現に存在する財産でなく、しばらくしてから受取人に直接振り込まれるため、相続財産としての認識が薄いかもしれませんが、「みなし相続財産」というかたちで相続財産に含まれてしまいます。

 しかし、相続人が取得した死亡保険金の合計額のうち、次の金額については非課税とされる制度がありますので、有効に活用したいところです。

 

    500万円 × 次のいずれかに該当する法定相続人 = 非課税金額

@     未成年者

A     障害者

B     相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者

 

  非課税金額の例(相続人である子がいるケース)

1.配偶者【○】と10歳の子【○】・・・・・・・・・ 1000万円

2.配偶者【○】と障害者である成人の子【○】・・・・ 1000万円

3.配偶者【○】と成人した別生計の子【×】・・・・・・ 500万円

4.成人で生計一の子【○】と成人で別生計の子【×】・・ 500万円

5.別居し別生計の配偶者【×】と成人で別生計の子【×】・・ 0万円

※【○】:非課税の対象となる人

 【×】:非課税の対象とならない人

 

この改正では次の点に留意が必要です。

  ・@〜Bの要件が重複する者はその者の数を「1人」として数えること

 ・法定相続人の範囲の制限は非課税金額の算定のみの適用であり、当該非課税の規定の適用対象者である相続人は従来通りであること

 

 改正前は、法定相続人であれば非課税金額の適用がありましたが、20歳以上の子が独立して一緒に暮らしていないといった場合は、その方の分の非課税金額が少なくなるといったケースが多くなるでしょう。生命保険金は相続対策になりにくくなりました。

(「生計を一にする」ことの解釈は非常に問題となりやすいので事前に確認することをお勧めします。)

 

※    退職手当金等に係る相続税の非課税規定については従来の通りです。

 

 

W  ≪ 未成年者控除 ・ 障害者控除の引き上げ ≫

 

 相続税の未成年者及び障害者に係る1年あたりの税額控除額が 6万円 ⇒ 10万円 に引き上げられます。

 

  未成年者控除   10万円  × 20歳に達するまでの年数

  障害者控除    10万円※ × 85歳に達するまでの年数

           (※特別障害者の場合は20万円)

 

 たとえば、相続人が15歳のお子様の場合の未成年者控除額

改正前    6万円 × (20歳 − 15歳) = 30万円

改正後   10万円 × (20歳 − 15歳) = 50万円

■贈与税編

 

ここからは、贈与税に話が変わります。

 

T  ≪ 20歳以上の子・孫にした場合の贈与税が緩和されます! ≫

 

相続税の税率変更に合わせて贈与税についても税率が変わります。

ここで注目したいのは、時限的ですが20歳以上の者が両親・祖父母などの直系親族から受ける贈与について、基礎控除の110万円を控除した後の金額で300万円〜3000万円までの部分の税率が現行より5%〜10%引き下げられた点です。すなわち、親から子や孫への贈与を今までよりも軽い税負担で行うことが可能です。

 

@現行とB20歳以上(措置法)との比較.bmp

 

@現行とA改正後(本法)との比較.bmp

 

U  ≪ 相続時精算課税制度の適用対象者の範囲が広がります。

 

相続時精算課税制度は、その選択により65歳以上の親から20歳以上の子に対する生前贈与に対して累積2500万円まで非課税となり、2500万円を超えた場合には超える部分について一律20%の贈与税が課せられます。年間110万円まで課税されない暦年課税方式に比べ、金額の大きな財産を一度に課税なしで贈与が可能ですが、相続発生時に相続財産に取り込まれて再計算され相続税で課税されます。

この制度は主に、贈与時点において将来相続税が発生しないと見込まれる方が行う場合に、贈与税が非課税、相続税も課税されないという、無税での財産移転ができることにメリットがあります。

今回の改正により、この制度の適用対象者の範囲が拡充されたことにより、世代間の財産移転が今まで以上に行いやすくなりました。ただし、次のような注意点がありますので、不利な選択をしないようにしたいものです。

 

≪ 相続時精算課税制度の注意点 

@     相続時精算課税制度は1度選択するとやめられません。

A     将来的に相続税の基礎控除が下がる改正などが行われ、相続税が発生することになると相続時精算課税制度のメリットがなくなる可能性があります。

 

図表 相続時精算課税制度の適用対象者.bmp 

基礎控除額の引き下げにより相続税の課税対象者が拡大しますし増税されることになりますので、贈与税については緩和されますので、今まで以上に生前贈与対策の重要性が増してまいります。

このページがご覧になった皆様の相続税・贈与税について考える契機となり、理解の一助となりましたら幸いです。