相続税の対策

相続と聞いても「うちは税金がかかる程財産はないから関係ないな」と考える方もいらっしゃると思いますが、遺された財産がある場合には、相続税がかかるか否かに関係なく、財産の配分方法を巡って親族間での争いになることがあります。

なかには親族間だけでは収拾がつかず、裁判沙汰にまで発展してしまい、「最初から財産を分けてくれていればこんなに揉めることもなかったのに・・・」ということも起こりえます。

また、相続税が生じるような場合には、遺産の分割が済んでいないと税金を軽減できる特例を受けられず、税負担が重くのしかかる場合もあります。

相続はただでさえ家族との別れを伴う辛い出来事ですので、相続が生じた場合に親族間での無用な争いや負担を避けるためにも時間に余裕をもって準備を進めておく必要があります。

なお、相続対策は、@争い対策A納税資金対策B節税対策の3つに大別され、@が最も重要となります。また、準備をする場合には、この順番で実行するとよいでしょう。

 

 

@相続争い対策

ここでは相続争い対策に有効な方法である「遺言」について触れていきます。遺言については、複数の種類があり、法的に決められた手順もありますので、それぞれの状況に応じて選択をしましょう。

 

■遺言の方法

遺言については、民法で定められた方式に従う必要があります。一般的に使われるのは、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」となりますが、それぞれメリットとデメリットが存在しますので、注意が必要です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言書を遺言者が手書きして作成する方法です。

自分で作成し、保管しておけばよいため、遺言内容を秘密にできる点や費用負担も生じない点がメリットですが、記載方法に誤りがある場合や記載事項に不備がある場合には無効となる点や紛失するリスクが生じる点、家庭裁判所による検認が必要な点がデメリットとなります。

なお、作成する際は下記の点に注意が必要となります。

 

  • すべての文書を本人が自筆で記載されていること
  • 「遺言書」のタイトルが記載されていること
  • 年月日が記載されていること
  • 氏名を記載されていること
  • 押印がされてるいこと

 

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言書を公証人に作成してもらう方法です。

遺言者が公証人役場で公証人と証人2人以上の立会いのうえ、口述した内容を公証人が筆記して作成するため、法的効力の心配が無くなる点や原本が公証人役場に保存されるため紛失するリスクが無くなる点がメリットですが、証人が2人以上必要なため、遺言内容の秘密を保持できなくなる点や財産価額に応じた手数料を負担する点がデメリットとなります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言書を遺言者が作成し、封印した状態のものを公証人役場で公証人と証人2人以上の前に提出し、遺言書であることを記録してもらう方法です。

署名以外はパソコン等での作成も可能である点や遺言内容を秘密にできる点、公証人役場に記録が残る点がメリットですが、記載事項に不備がある場合等には無効となる点や保管は本人となるため紛失するリスクが生じる点、手数料を負担する点、家庭裁判所による検認が必要な点がデメリットとなります。

 

■遺言の方法による比較

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■遺言書の検認

遺言書が公正証書で作成されている場合には、そのまま開封することができますが、自筆証書や秘密証書で作成されている場合には、家庭裁判所で相続人等の立ち会いによる検認が必要となります。この検認の手続きを無視して無断で開封してしまうと、5万円以下の過料が科されますので、注意が必要です。

なお、検認については、下記のものが必要となります。

 

  • 検認の申立書
  • 相続人全員(申立人含む)の戸籍謄本
  • 遺言者の戸籍
  • 収入印紙(遺言書1通につき800円)

 

 

■遺言の効力・訂正方法

遺言書を作成すると決めると、内容を十分に検討しながら作成することになりますが、ついつい内容を詰め込み過ぎてしまう場合があります。しかし、遺言書に記載したからといって、すべての内容について法的な効力が生じるわけではありません。具体的には下記のようなものに限られています。

・身分に関するもの

 

  • 子の認知
  • 未成年後見人または未成年後見監督人の指定など

・財産に関するもの

 

  • 遺贈
  • 相続分の指定
  • 遺産分割の方法の指定など

 

 

なお、法的な効力が生じないものを記載できないわけではなく、それに従うかどうかはご遺族の判断次第になるということですので、伝えたいことは記載しておいても問題ありません。

また、遺言の効力は、遺言者が死亡によって初めて生じますので、遺言者の存命中であればいつでも撤回や訂正が可能です。ただし、訂正の方法についても民法に定められた方式に従う必要がありますので注意が必要です。

 

■遺留分に注意

相続においては、被相続人の配偶者、子供と両親については最低限の財産を相続する権利が「遺留分」として認められているため、これを超えて指定することはできませんので、注意が必要です。

 

 

A納税資金対策

相続が生じてしまうと税金関係以外にも様々な手続きが必要となる可能性がありますので、いざという時に慌てないためにも、時間に余裕をもって準備を進めておく必要があります。争い対策や節税対策はしっかり準備したけれど、相続税が生じたときに手元にお金がなかったということも起こりえます。

そのため、ここでは準備の内でも非常に大切な納税資金を用意するための方法について触れていきます。不動産や株式などの現物資産ばかりを保有している方に相続税が生じてしまった場合には、一般的には相続人が現金を用意する必要があります。しかし、手元資金に余裕がある方ばかりとは限りません。そこで、納税資金を用意するための代表的な方法として、「生命保険を活用する方法」、「退職金・弔慰金を活用する方法」、「金庫株を活用する方法」を検討してみましょう。

 

生命保険を活用する方法

生前から生命保険に加入し、相続が生じた場合に、相続人に死亡保険金が支払われるようにすることで納税資金を用意する方法です。

また、死亡保険金については、法定相続人1人に対して500万円※までが非課税となるため、納税資金の用意とともに節税対策にもなります。

なお、保険への加入方法によっては、死亡保険金について、相続税ではなく、所得税や贈与税が生じてしまう場合がありますので、注意が必要です。

※現在改正が検討されているため、範囲が縮小される可能性がありますので、今後の動向にご注意下さい。

退職金・弔慰金を活用する方法

被相続人が同族会社の経営者や相続人が経営している同族会社の役員などに該当し、死亡の時まで在籍している場合に、会社からの死亡退職金や弔慰金を支払うことで納税資金を用意する方法です。

なお、死亡退職金については、生命保険における死亡保険金と同様に、法定相続人1人に対して500万円まで弔慰金については一定の範囲までが非課税となります。

また、被相続人が同族会社の株式を所有している場合には、死亡退職金や弔慰金は株式の評価に際し、価値の引き下げ効果を生じる可能性もあり、その場合には節税対策にもなります。

ただし、死亡退職金や弔慰金は一定の範囲を超えて支払うと税務署に否認される場合がありますので、金額の算定については注意が必要です。

金庫株を活用する方法

被相続人が同族会社の株主であり、相続人がその会社の株式を相続した場合に、その会社に自社株式として買い取ってもらうことで納税資金を用意する方法です。

通常、自社株式として買い取ってもらうと、売却した価額から資本金等の金額を差し引いた累積黒字相当分については、みなし配当として最高で50%の所得税・住民税がかかることになります。しかし、相続した株式を相続税の申告期限から3年以内に自社株式として買い取ってもらった場合に限り、みなし配当ではなく、譲渡所得課税となる特例により、株式の売却金額から株式の取得費用を差し引いた売却益に対して一律20%の所得税・住民税がかかることになりますので、場合によっては節税対策にもなります。

延納・物納

 

 

B節税対策

■暦年贈与の活用

■非課税贈与の活用

■居住用財産の配偶者への贈与

 

■相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度とは、一定の要件を満たしていれば、生前贈与をしても2,500万円までは贈与税の負担なしに行えるという、相続財産の前渡しを促進するための制度です。

この制度を選択すると総額で2,500万円まで何度でも何年間に渡って贈与をしても贈与税は生じませんが、贈与の総額が2,500万円を超えた部分については一律20%の贈与税が生じることになります。そして、相続が生じた際に、贈与された財産の総額が相続税の計算上、相続財産に加算して相続税が計算され、納めた贈与税があればこの時に精算されることになります。

なお、この制度は65歳以上の親から20歳以上の子に対する贈与を行う場合が前提となり、この制度を利用する最初の贈与の際に相続時精算課税選択届出書を税務署に提出する必要があります。

また、一旦この制度を選択すると通常の暦年贈与には変更できませんし、この制度を適用した宅地については、相続税の計算上優遇される小規模宅地等の特例が使えなくなりますので、選択する際には注意が必要となります。

この制度を利用するメリットがあるケースには、以下のものがあります。

 

  • 相続が生じても相続税がかからないケース(早いうちに望む人にあげられる)
  • 評価額を計算するタイミングが贈与時となるため、不動産や株式などで値上がりを見込める財産があるケース
  • 賃貸収入等を見込める収益財産があるケース(収益が相続人のものになる)

 

なお、現時点ではメリットを享受出来る方であっても、税制改正によっては、不利益が生じるリスクがあります。

 

【その他】

■配偶者への相続税による非課税枠の活用

■養子縁組による基礎控除枠の拡大

■非課税資産の購入

■建替えやリフォーム、居住用不動産の特別控除(所得税)の活用

■小規模宅地等の特例の活用

小規模宅地等の特例とは、被相続人が事業を行っていた土地や住んでいた土地などの土地について、一定の要件を満たしていれば、通常の評価方法で算出した金額から50%または80%を減額した状態で相続財産として相続税を計算できるというものです。

50%の減額をできるのは、不動産賃貸付を行っていた土地の200uまで80%の減額をできるのは、住んでいた土地の240uまでか事業を行っていた土地の400uまでとなっており、複数の土地を相続した場合には、これらの範囲で有利になるように計算します。

また、この特例はその相続人等がそれぞれの土地をそれぞれの用途で継続し、かつ、その全員が特例を使うことに同意をし、さらに期限までに申告をする必要があるため、遺産分割協議が完了しているなどの要件を満たす必要があります。

なお、対象となる土地が申告期限までに分割できていなくても、申告期限から3年以内に分割されれば特例を適用した申告(更正の請求)をすることができます。